THE AWAKENING / The Ahmad Jamal Trio
Tue.01.12.2009 Posted in us / jazz
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先日購入したCD - 2007年


ピアノジャズの二枚目は米国のジャズピアニスト、アーマッド・ジャマルが1970年に録音した人気盤です。アーマッド・ジャマルといえば、マイルス・デイヴィスに影響を与えたとか、彼の誘いを断ったとか、カクテル・ピアニストだとか、ヒップホップのサンプリングネタになったとか……色々と話題に上ることの多い人。1950年代後半から1960年代前半にかけて、Argo/Cadetに多くのリーダー作を残していることから、当時の米国で結構人気があったということは想像できます。でも、そのわりに日本のジャズファンの間ではあまり人気がないようで、ほとんどの作品は国内CD化されていません。
キャリアが非常に長く、彼についてはいまだに全貌が把握できていませんが、50年代の『Chamber Music of the New Jazz』や『But Not for Me; at the Pershing』あたりは軽くて軟らかいサウンドのピアノジャズで、カクテル・ピアノという形容も頷けるサウンドです。ゆったりとした独特の弾き方はとても印象に残ります。マイルスがウィントン・ケリーに「ジャマルのように弾け」と指示したという逸話はこの頃の演奏でしょうか。
一方、1972年の『Live At Oil Can Harry's(ライヴ・アット・オイル・カン・ハリーズ)』は初期作とはまた別の印象で、例えば、スタンダードナンバー「Poinciana」は、1958年の『But Not for Me; at the Pershing』にも、1972年の『Live At Oil Can Harry's』にも収録されていますが、これらは全く違うアレンジで演奏されています。時代の変化ということなのでしょうか、前者が明るく軽快なラテンジャズだとすれば、後者のほうは一曲の尺も長く、とても聴き応えのあるスピリチュアルジャズといえそう。
本日紹介する1970年録音の『アウェイクニング』は、どちらかというと後者の『Live At Oil Can Harry's』に近いサウンドになっています。とても力強く、アグレッシブで実験的な音作りやアレンジは特筆すべきですし、とはいっても、難解なフリージャズとは異なるメロディアスな曲調やダンサブルな側面も非常に印象的。この辺は彼のオリジナリティによるところなのでしょうか。


The Awakening
THE AWAKENING / The Ahmad Jamal Trio
-円 (輸入盤CD/-)

本作でトリオを組むのはFrank Gant(Drums)、Jamil Nasser(Bass)の二人。アーマッド・ジャマルのいくつかの他のアルバムにも、彼らのクレジットを見つけることができますので、気心が知れた仲だったのでしょう。レーベルは老舗のジャズレーベル、Impulse(インパルス)です。コルトレーンの諸作で知られるインパルスということで、スピリチュアルやフリーといった言葉が思い浮かぶようなサウンドになるのも、ある意味では必然なのかもしれません。
でも、本作が素晴らしいのは、やはり湧き水のように溢れ出てくる美しいフレーズの数々や、随所に見え隠れするダンスミュージック的側面のほうでしょう。跳ねるようなピアノの音色と、目まぐるしいほどのリズムの変化がとにかく格好いいです。
曲目はオリジナルが2曲で、カヴァーが5曲という構成になっています。オープニングのオリジナル曲「The Awakening(覚醒)」はこのアルバムが持つ激しさと美しさを兼ね備えたハイライトナンバー。まさに曲名の通り、新しいアーマッド・ジャマルの幕開けを謳い上げるかのような最高のジャズダンサーです。もう一つのオリジナル曲である3曲目の「Patterns」も、実験的な部分を象徴するような曲構成といえるでしょう。オリジナルの2曲には本作が有しているオリジナリティが凝縮されている気がします。
カヴァーのほうも、有名なスタンダードばかりなのにアレンジと演奏はどれも本当にユニーク。美しいフレーズが詰まった宝石箱のようなハービー・ハンコック作「Dolphin Dance」やジャズスタンダード「You're My Everything」は、ヒップホップでサンプリングされるのも当然でしょう。その他にも、スロウでモーダルな演奏の中にメロウネスを散りばめた「I Love Music」や「Stolen Moments」、さらにエンディングを飾るジョビンの「Wave」も、選曲はもちろんのこと、曲調も展開も意外性に満ちた演奏で、最後まで聴く者を飽きさせません。
モードジャズやソウルジャズ、フリージャズ、スピリチュアルジャズ、ジャズロックなどなど、ジャズは様々なカテゴライズがなされますが、そんなカテゴリー分けの言葉が吹き飛んでしまうほどの強烈さとで新鮮さを感じさせてくれるアルバムです。
最後に少し話は逸れますが、ジミ・ヘンドリックスやスライ&ザ・ファミリー・ストーンがウッドストックで大暴れしたのが1969年の夏。彼らの活躍に強く影響を受けていたといわれるジャズ界の重鎮マイルス・デイヴィスが『Bitches Brew』を発表したのも同じ年です。翌年の1970年に制作された本作が、あの時代にパワーを持っていたロックやファンク、ソウルに対するジャズピアニスト、アーマッド・ジャマルの回答であるかどうかは分かりませんが、いずれにしても、この作品にも内から外に向かって爆発するような何かが感じられるのは確かではないかと思います。収録曲は以下の通り。


1. The Awakening
2. I Love Music
3. Patterns
4. Dolphin Dance
5. You're My Everything
6. Stolen Moments
7. Wave


これは数年前にデジパックの輸入盤CDで購入しました。初めて聴いたときの衝撃は今でも忘れられません。コンディションの良いものなら、LPでもほしいところです。CDのほうは国内盤でもリイシューされています。LPのほうでリイシューされているかは不明ですが、探していればオリジナル盤LPにも時々出会えそうです。ただ、お店で見かけてもすぐに売れてしまうことが多いかも。

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THE COMPLETE COLUMBIA STUDIO RECORDINGS / Miles Davis and Gil Evans
Wed.15.11.2006 Posted in us / jazz
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The Miles Davis and Gil Evans: Complete Columbia Studio Recordings
THE COMPLETE COLUMBIA STUDIO RECORDINGS / Miles Davis and Gil Evans

マイルス・デイヴィスとギル・エヴァンスの共同作業。彼らはコロムビアから『MILES AHEAD』、『PORGY AND BESS』、『SKETCHES OF SPAIN』、『QUIET NIGHTS』の4作品をリリースしました。ジャズファン以外から評価の高い作品群なのかもしれません。究極のイージーリスニングミュージックなんて言われ方もされたります。ジャンル分けの難しい名演集。完成度が高く、ちっとも古びていません。「My Ship」は大好きです。

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KIND OF BLUE / Miles Davis
Sun.15.10.2006 Posted in us / jazz
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Kind of Blue
KIND OF BLUE / Miles Davis

ビル・エヴァンスも参加しているマイルス・デイヴィスのカインド・オブ・ブルー。名盤中の名盤です。というより、比べられるものがありません。同じタイプの音楽がないといか。ある意味でモダンジャズの到達点。正真正銘の歴史的名演。素晴らしい。「Blue in Green」なんて何百回聴いたか分かりません。

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