先日購入したCD - 2006年
9月に入ったのにまだまだ暑いので今日もヴィブラフォンジャズをもう一枚。レア・グルーヴやクラブ・ジャズといった文脈で語られることの多いロイ・エアーズのアルバムを紹介します。
ロイ・エアーズといえば、1973年のブラックムーヴィー『コフィー(Coffy)』のサウンドトラックや、ロイ・エアーズ・ユビキティ名義でリリースした『MYSTIC VOYAGE / Roy Ayers Ubiquity』(1976年)、『EVERYBODY LOVES THE SUNSHINE / Roy Ayers Ubiquity』(1976年)などのメロウな作品群が最も知られているところかもしれません。1970年代半ば以降の活躍が目立つ彼ですが、1960年代にもアトランティックから、いくつかのリーダー作をリリースしていて、そのうちの一枚がこちらの『STONED SOUL PICNIC』(1968, Atlantic)。
ジャケット左の最前列にハービー・マン(Herbie Mann)が写っていますが、本作では彼がプロデュースを務めているようです。ちなみに、ハービー・マンのヒット作『MEMPHIS UNDERGROUND / Herbie Mann』(1969, Atlantic)もほぼ同時期の録音で、そちらにはロイ・エアーズも参加しています。
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時代の影響でしょうか、1960年代後半にアトランティックからリリースされたロイ・エアーズのリーダー作はいずれもモーダル~スピリチュアルなサウンドで、1970年代のアルバムとは少し毛色が異なります。また、当時のUSジャズ界を牽引するアーティストたちがサポートとして名を連ねている点も共通しているかもしれません。
本作のクレジットも、ロイ・エアーズ(Roy Ayers, vibes)、ゲイリー・バーツ(Gary Bartz, alt sax)、チャールズ・トリヴァー(Charles Tolliver, trumpet & flugelhorn)、ヒューバート・ロウズ(Hubert Laws, flute)、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock, piano)、ロン・カーター(Ron Carter, bass)、グラディ・テイト(Grady Tate, drums)という“超”が付く豪華メンバー。1968年のハービー・ハンコックといえば、ちょうどブルーノートから『SPEAK LIKE A CHILD / Herbie Hancock』(1968, Blue Note)を発表した年です。当時のポジションを考えれば、ロイ・エアーズが脇役とさえいえそうな陣容が揃っています。ちなみに、クレジットを見る限り、フルートを吹いているのはハービー・マンではなく、ヒューバート・ロウズみたいですね。
選曲や音作りにはプロデューサーを務めたハービー・マンの影響もあるのでしょうか。長尺の曲が多いわりには、全体的に選曲も演奏も聴きやすい印象を受けます。オープニングの「A ROSE FOR CINDY」はアルバム唯一となるロイ・エアーズ自身のオリジナル曲で、フルートとヴィブラフォンのスピリチュアルな音色から幕が開ける幻想的なナンバー。2曲目のLaura Nyro作「STONED SOUL PICNIC」は、ソウル・ジャズ気味の明るくポップな演奏で、アルバムのタイトルナンバーにもなっています。
3曲目はボサノヴァ・スタンダードであるアントニオ・カルロス・ジョビン作「WAVE」。上品なアレンジで、ヴィブラフォンが流麗にメロディを奏でていく非常に美しいナンバーです。ちなみに、この曲のみ、ベースはミロスラフ・ヴィトウス(Miroslav Vitous)が担当しているとのこと。
4曲目は「WAVE」同様に多くのアーティストがカヴァーしている人気曲「FOR ONCE IN MY LIFE」。お馴染みのメロディがスロウテンポで丁寧に優しく奏でられていきます。ジャズ・ファンク~スピリチュアルな雰囲気が漂う5曲目「LIL'S PARADISE」はチャールズ・トリヴァーのオリジナルナンバーです。エンディングは、後にロイ・エアーズ・ユビキティにも参加するエドウィン・バードソング(Edwin Birdsong)作のモーダルなジャズナンバー「WHAT THE PEOPLE SAY」で幕を引きます。収録曲は以下の通りです。
1. A ROSE FOR CINDY
2. STONED SOUL PICNIC
3. WAVE
4. FOR ONCE IN MY LIFE
5. LIL'S PARADISE
6. WHAT THE PEOPLE SAY
これは結構前にデジパック仕様の輸入盤CDで購入しました。LPでも再発されていたと思いますので、どちらのフォーマットでも入手しやすいはず。ロイ・エアーズはクラブジャズ界隈で非常に人気の高いアーティストですが、本作はわりと広い範囲のジャズファン~レアグルーヴファンにオススメできるアルバムだと思います。
Theme: ジャズファンク/レアグルーヴ « 音楽
Tag: ロイ・エアーズ ハービー・マン ゲイリー・バーツ チャールズ・トリヴァー ヒューバート・ロウズ ハービー・ハンコック ロン・カーター グラディ・テイト ミロスラフ・ヴィトウス レア・グルーヴ
先日購入したCD - 2006年
大変ご無沙汰しております。しばらくバタバタしていてブログを放置しっぱなしでしたが、少し落ち着いたので更新しようと思います。よく見てみたら今年に入ってまだ更新していなかったんですね・・・。基本的に更新ペースなどは決めていないので、すっかり忘れてました・・・。また気ままに続けていこうと思いますので、お付き合いください。
前回までピアノジャズのCDを四枚目まで紹介していたので、とりあえずその続きを。ラストとなる五枚目は80年代のヨーロッパで録音されたライブ盤です。言わずと知れたジャズピアニストの大御所チック・コリアが、ドイツの名門レーベルECMからリリースしたアルバム。前回がMPSだったので、今回はECMから何か一枚選ぼうと思い、これにしました。
ECMはドイツを代表する著名なジャズレーベル。クラシックや現代音楽のジャンルにも意欲的であり、独特の美しいジャケットデザインと硬質なサウンドで広く知られています。1969年に設立されてから、今もなおレーベルカラーを保っている数少ないレーベルの一つといえるかもしれません。今日紹介するチック・コリアの他には、キース・ジャレットあたりが有名でしょうか。どちらかというと、キースのほうがソロやスタンダードなど、リリカルで聴きやすいピアノ作品をリリースし、商業的に成功している印象があります。しかし、実はチックのほうが先にECMでピアノソロ作の『Piano Improvisations Vol. 1』(1971年)、『Piano Improvisations Vol. 2』(1971年)をレコーディングしていますし、カモメのジャケットで知られるヒット作『Return to Forever』(1972年)や、ゲイリー・バートン(Gary Burton)とのデュオ作『Crystal Silence』(1972年)もECMからのリリースです。チック・コリアもまたECMを代表するアーティストの一人といえるかもしれません。
チック・コリアといえば、とにかく多彩で多作な人。60年代末にピアノトリオ作『Now He Sings, Now He Sobs』(1968年, Solid State)で注目を集めてから、マイルス・デイビスの大作『Bitches Brew』(1970年, Columbia)に参加してフェンダー・ローズを弾いたり、Blue Noteでインプロビゼーション満載のフリージャズを録音したり……。そして1972年にはブラジル出身のアイアート・モレイラ(Airto Moreira)やフローラ・プリム(Flora Purim)と“Return to Forever”を組んで前述の人気作『Return to Forever』(1972年, ECM)をリリース。続く『Light as a Feather』(1972年, Polydor)ではあの名曲「Spain」も披露しました。その後は、ヴィヴラフォン奏者のゲイリー・バートンらとデュオをやったり、アコースティックに回帰したり、エレクトリックバンドを組んだり、90年代には自身のレーベル“Stretch Records”まで設立しています。
まるでカメレオンのような彼のキャリアを、時系列で正確に追っていくのは僕にとって不可能な作業ですが、その膨大なディスコグラフィーの中から偶然見つけたのが、ECMからリリースされた1984年のライブ録音盤『TRIO MUSIC, LIVE IN EUROPE』。ジャズピアニストの中でも演奏は技巧派で、雰囲気的には軽快なラテンのイメージが強いチック・コリアですが、本作はリリカルな音色を存分に聴かせてくれるピアノトリオアルバムです。
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1984年録音の本作は、ピアノのチック・コリア(Chick Corea)、ベースのミロスラフ・ヴィトウス(Miroslav Vitous)、ドラムスのロイ・ヘインズ(Roy Haynes)によるオーソドックスなピアノトリオです。これはソリッド・ステートの出世作『Now He Sings, Now He Sobs』と同じメンバー。時を経て再結成した後のヨーロッパツアーにおけるライブ録音ということになります。ライブの舞台はスイスのウィルサウ(Willisau)とドイツ南部のロイトリンゲン(Reutlingen)。
全体的には、アグレッシブな初期の作品よりも、落ち着いた雰囲気で様々なスタイルを楽しんでいる感じの印象。オリジナルナンバーだけでなく、スタンダードやメドレー、クラシックをモチーフにした楽曲など、選曲や解釈もバラエティに溢れています。気心知れたメンバーによる安定感抜群の演奏で、ヨーロッパのファンを大いに魅了したことでしょう。
オープニングを飾る「The Loop」は美しいメロディラインをリリカルに聴かせてくれるチックのオリジナルナンバー。1曲目からこのアルバムのハイライトともいえそうな素晴らしい演奏です。2曲目のスタンダードナンバー「I Hear a Rhapsody」も、チックらしいフレージングが詰まっています。
3曲目は1曲目同様、甘美な旋律からスタートし、流れるように展開していく「Summer Night」~お馴染みコール・ポーター作「夜も昼も」のスタンダードメドレー。14分以上に及ぶ長尺ですが、聴く側を全く飽きさせません。クラシックの楽曲であるスクリャービン(Alexander Scriabin)作「前奏曲第2番」をピアノソロで取り入れた4曲目「Prelude No. 2 - Mock Up」も、12分以上の美しいメドレーナンバーです。
後半は5曲目「Transformation」と7曲目「Mirovisions」がミロスラフ・ヴィトウスのオリジナルで、6曲目がロイ・ヘインズのオリジナル「Hittin' It」。ベースのミロスラフ・ヴィトウス作「Transformation」は彼一人によるアルコ・ソロ。ロイ・ヘインズ作「Hittin' It」はドラムスのソロ演奏です。そして、エンディングの「Mirovisions」でピアノトリオに戻り、ややフリージャズ寄りのスタイルでアルバムは幕を引きます。収録曲は以下の通りです。
1. The Loop
2. I Hear A Rhapsody
3. Summer Night - Night And Day
4. Prelude No. 2 - Mock Up
5. Transformation
6. Hittin' It
7. Mirovisions
数年前、ピアノジャズのCDばかりを集めているときに国内盤CDで購入しました。邦題は『夜も昼も』。チック・コリアはピアノもエレピも、そしてジャズもクラシックもラテンもフュージョンも、とにかく様々なスタイルを自在に操り、何でも器用にこなす人なので、聴く度に感心させられたり、驚かされたりすることが多いです。これも感心させられ、良い意味で驚かされた中の一枚。傑作だと思います。ピアノトリオが好きな方で、まだ未聴の方がいたら、ぜひ聴いてみてください。
Tag: チック・コリア ECM ドイツ ピアノトリオ ミロスラフ・ヴィトウス ロイ・ヘインズ 夜も昼も